会報 第3号  平成13年6月27日発行

 梅雨の侯、皆様いかかお過ごしでしょうか。長らくお待たせしました。市民の会会報第3号は以下の内容(抜粋)でお届けいたします。
 過日、新聞でも報道された豊田スタジアム建設費増額問題について、市民の会か市に提出した公開質問状と市側の回答書の内容をお知らせします(質問項目と回答を対比させて掲載しています) また、その回答について説明を受けた上で、いくつかの疑問点も出てさましたので併せてお伝えします。
〔質問事項〕
質問1 スタジアムの本体工事を請け負っている共同企業体(以下、「JV」という)と請負契約締結時から何回も設計変更に関する協議が行われたと言われるが、その設計変更・の日時、協議の経過およぴ変更された工事内容を、具体的に分かりやすく明らかにされたい。また、それらの設計変更に設計会社は、どんな関与をしたのか、あわせて具体的に説明されたい。

回答1 現在までに3回変更契約を締結しています。
   第1回目  平成11年3月26日
     主な変更点は、連続地中壁の掘削長、坑断面の縮小と打設工法の変更等

   第2回目 平成12年3月27B
     主な変更点は、鉄骨構造体、抗施工量、躯体コンクリートの変更等

   第3回目 平成13年3月28日
   主な変更点は、設備・工事・外構工事、固定屋根の変更等

現在、最終段階の精査を終了し、請負者と協議をしております。この設計変更の内容は別紙のとおりです。
設計事務所は、常に委託者である豊田市の代行者であることを自覚し、厳正かつ公平に監理にあたること、公共施設であることを認識し、かつ、施設の目的を十分に把握してその趣旨にそうよう努力すること等を遵守して監理業務を行うこととなっております。
質問2 その設計変更に関し当初予定されていなかった可動式屋根や大型スクリーンの設定は、どのような影響を与えたのか明らかにされたい。

回答2 開閉式星根は当初設計に入っております。また、可動大型映像装置については設計事務所が検討し、本体に影誉のないことを確認し設置いたしました。
質問3 これまでの設計変更に関し、設計会社の責任はないのか.見解を示されたい。

回答3 設計事務所においては、着実にその業済を実施しているところです。
質問4 伝えられるところによれば、平成11年3月と平成12年3月での設計変更協議において、JV側が契約金額の増額を求めたのに対し、市当局は減額すべき根拠を主張し、結果として双方の主張を相殺することで、契約金額の変更はなかったということであるが、その交渉のやり取りを、話し合いの場での議事録を再現する形で、明らかにされたい。

回答4 平成11年3月、平成12年3月、平成13年3月の3回の設計変更協議に関しては、設計変更協議書により双方確認の上金額の変更をともなわない契約を締結しています。
質問5 これまで、契約金額の変更を含む契約変更はなかったと言われているが、現時点で、契約金額をめぐって市当局とJVとで、どのような交渉がされているのか。双方の主張を解釈を如えることなく列記し、主張の対立点を市民に明らかにされたい。

回答5 現在、最終段階での精査を終了し、請負者との協議をしております。
質問6 当会は、当初の請負契約が正当なもので、JV側も自信をもって契約に応じたものであると信じたいし、ましてや、市当局から「将来は増額要求にも相談にのる」というような裏約束があったとは考えたくない。したがって、当初契約が粛々として履行されるのが当然のあり方であると考える。その意味では、この問題が、市当局とJVの交渉ごとになっていること自体が理解できない。しかし、現実に交渉の一方の当事者になっている市当局としては、何を望ましい解決策と考えているのか見解を明らかにするとともに、そう考えている根拠を明示されたい。

画答6 設計変更については、それが確定した段階で適切な変更契約を締結すべきものと考えております。
別紙

豊田スタジアムの設計変更について

 矢作緑地施設整備工事(豊田スタジアム建設工事)については安全牲、利便牲の確保、管理上運営上の機能確保の観点から、今回補正予算として5億円の増額変更をお願いするものです。主な変更内容は以下の通りです。

(1)安全牲・利便性の確保によるもの
防火区画の強化 観客席プレキャストコンクリート段床目地を耐火材に変更 12,000千円
スロープ手摺の追加 外部スロープの手摺追加   2,500千円
誘導シートの追知 身障者協会との協議による  5,100千円
コンコース手摺部材の変更 ステンレスからスチールに変更 ▲89,800千円
観客席、手摺の変更 チケットの販売形態に合せ座席のグレードを変更また手摺の材質を変更 ▲50,200千円
身障者便所の手摺変更 身障者協会との協議による   600千円
開閉屋根のシステム変更
(骨組み膜溝造からこ重空気膜溝造)
豪雨・防火対策、積雪時の開閉機能強化、緊急停止対策として繋ぎ梁の補強、可動
パラペットの取付け   
762,100千円
鉄骨部身の補強 外装仕上げ材の下地鉄骨補強 136,800千円
高所点検用通路補強 キャットウォーク鉄骨の補強 29,100千円
(2)管理上の機能確保によるもの
外装材の耐久性向上 軒天を石綿ケイカル板からプレキャストコンクリート板、壁柱を成型セメント板からプレキャストコンクリート板に変更 239,000千円
防水工法の変更 アスファルト防水を一部防水性塗床にまた、施工範囲を減少 ▲30,300千円
床点検口の追加 床下ピットの点検ロを追加 1,800千円
撥水剤仕上げの変更 仕上げ施工範囲減少 ▲163,800千円
ピッチ排水機能の強化 排水ポンプの能力アップ 8,100千円
フリーアクセスフロア 管理事務室、中央監視室に導入 3,300千円
(3)運営上の機能確保によるもの
実況放送機能強化 放送室の仕上げ材を変更 3,500千円
防音断熱機能の施工見直し グラスウール、発砲ウレタン、エバーライトの施工範囲を減少 ▲60,300千円
大型映像装置を可動式とするための変更 本体鉄骨に吊り金具を追加 12,800千円
仕上材の変更 コンコース床 タイルから塗床等
  〃  等天井メッシュからケイカル板
段床、地下駐車場防塵塗装を取止めと変更
▲85,200千円
▲81,800千円
▲46,300千円
フィールド・外部階段変更 キャスター付にする等 6,400千円
ピッチ変更 ピッチ周辺を複合弾性塗床に変更 3,800千円
(4)その他要因によるもの
未買収地による変更 取得に時間を要し法面防災工事等追加 6,600千円
購入土の取止め 公共残土に変更 ▲179,300千円
上記合計額 446,500千円

注)金額は全て直接工事費(変更金額は直接工事費に諸経費等を含めたもの)

JVへの対応姿勢は評価できるが、まだまだはぴこる秘密主義
回答に対するいくつかの疑問

サッカー場問題を忘れない!とよた市民の会
 6月1日午後4時より、私たちは市当局から、前掲した回答書の説明を受け、約2時間質疑応答をしました。対応したのは、市長直属の村山専門監とサッカー場担当の児島課長でした。

両氏の説明を総合して、この問題の経過をまとめると、次のようになります。
  1. サッカー場本体工事の着工は平成10年9月であったが、平成12年8月31日と平成13年2月15日のニ度、建設業者であるJV側から、契約金額の増額を求める要望書が提出された(要望金額は、児島課長の記憶では29億円。巷では35億円といわれた)
  2. 市当局は、各年度の工事費の支払いをするために、平成11、12、13年のそれぞれ3月末に、JV側と設計変更契約をした。この間様々な設計変更があったが、増減額プラスマイナスゼロということで、契約金額の変更はなかった。しかし、本年3月末の時点において、積み残した問題があることは、両者が認識していた。
  3. 新年度に入って、市当局は、JV側の要望項目を逐一精査して結論を出すという方針を決定し、4月18日付で、そのための建築部門の専門職員からなるプロジェクトチームを発足させ、彼等は5月の連休を返上して精査に取り組んだ。その結果、JV側のニ重請求や勘違いなどが見つかり、4億4,650万円の増額で済んだ。これに消費税や管理費部分を上乗せして、5億円の増額を市議会にお願いする。
 以上の経過を前提にして、私たちの評価と疑問を明らかにします。
  1. 余りにも遅すぎた回答。
     私たちが公開質問状を出したのは、3月22日でした。その内容は、「どうするのか結論を早く知らせよ」という趣旨ではなく、「市当局とJV側とで、何がもめているのか、その対立点を明らかにして、問題の真相を公表してほしい」というものでした。
     その趣旨を真正面から受け止めたなら、「JV側の要望項目を逐一精査して結論を出すという方針」を決定した時点で、回答が出来たはずです。しかも、回答日時の設定も、前日に思政クラブに説明し、その日の直前に市議会全員協議会に説明した後にしか、回答できないというものでした。全協で了解を得るということは、議会を含めて市としての意思決斉の事実上の完了を意味しますから、私たちへの回答は、決定の通知ということになります。
     政策の決定内容の是非だけではなく、決定過程の透明性が問われているという時代認識が全く欠如している今回の対応でした。
  2. 公開質問状を出した意義は大きかった。
     私たちは、市当局が、この種の問題について従来の「ドンブリ勘定」の決着方式をとらず、「JV側の要望項目を逐一精査して結論を出すという方針」をとったことを、正当に評価したいと思います。その方針を決定したのは新年度になってからということですので、私たちが提出した公開質問状が何らかの影響を与えていると確信しています。少なくとも、市民に説明可能な方針でなければならないと意識した点において。
  3. 過去の変更契約の内容とJV側の要望書の公開を要求。
     ところで、市当局が今回はじめて、JV側の要求に対して厳密な精査方式を採用したとすれば、過去3回の変更契約がどのような作業を経てされたのかが疑問になります。質疑応答でも、その点を明らかには出来ませんでした。
     また、今回の市当局の説明をそのまま信用すると、騒ぎの原因は、JV側の要望書の内容が余りにズサンであったの一語に尽きますが、大手ゼネコンのJVが、果たしてそんないい加減なことをするのかも、正直に言って疑問です。
     そこで、過去3回の変更契約の要旨を示す資料の提供と、JV側が提出した要望書の公開を求めました。
  4. 増額の原因は、吊り屋根式工法と水害対策。
     前掲の設計変更に関する資料と市当局の説明から判断すると、工事費が増額となった最大の原因は、吊り屋根式と言われる特殊な工法にあったと思われます。つまり、観客席の柱を極力少なくするために、スタジアムの屋根を4本のマストからのワイアーで吊り上げる工法が採用され、しかも、その屋根に付属する開閉式屋根と可動大型映像装置は、南北に走る2本の骨析で支えるという仕組みになっています。こうした工法のために、他のサッカー場に比べて1席当たりの建設費が割安であったと言われていますが、工法の特殊性のために設計変更が相次いだことも事実です。
     出来あがった構造は、ゲームが非常に見やすいことで、サッカー関係者の間では極めて高い評価を得ているとのことですが、不慮の事故が起きないことと、無用の長物にならないことを願わずにはおられません。
     また、一昨年、昨年と相次いで水害に見舞われたことも、設計変更の原因になったようです。建設地は、もともと遊水池的機能をもつ農地でしたから、立地選定の間違いを証明してしまったことになります。これまた、これ以上の水害が本市を襲わないことを願うばかりです。

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