会報 第4号 平成13年9月5日発行 |
環境教育アニメ映画「いのちの地球 ダイオキシンの夏」
朝夕涼しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 |
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「(株)枝下」問題からのいくつかの教訓小林 おさむ
「(株)枝下」問題あるいはダイオキシン問題の本質については、本紙前々号で、小笠原
輝美副代表が、大久保貞利さんの講演を紹介しつつ述べているので、ここでは、「(株)枝下」
問題によって明らかになった産廃環境行政の問題点について指摘しておきたい。その前提と
して、産廃行政の所管が、豊田市の中核市への移行によって、平成10年3月31日までは
愛知県、同4月1日からは豊田市になったことを念頭に置かれたい。
県は平成10年3月3日に焼却施設を許可私たちは、この問題に関して2回、豊田市に情報公開請求をした。最初は、ゴミ問題について先進的な活動をしている尾張地区の市民が、県に情報公開請求 をしたのに対し、県が、「中核市への移行で、文書はすべて豊田市に渡してしまったので所 持していない」という、おかしな理由で非公開としたために、私たちが市の条例に基づいて、 「県からもらった文書をすべて出せ」と請求したものである。 公開された文書を見て、最も驚いたのは、(株)枝下の焼却施設の設置許可が、豊田市が 中核市に移行する直前の平成10年3月3月に出されていたことであった。地元の人々によれ ば、平成8年後半から迷惑施設として問題になっていたにも拘らずにである。特に私自身の 問題としては、当時県議会に席を得ていたのであるから、「一体、自分は何をしていたのだ ろう」という自責の念と恥ずかしさでいっぱいとなった。 この点の事情の説明を求めて、県環境部の担当者に質疑する機会をもった。担当者の説明 は要領を得ず、つまるところ、本庁の環境部と出先の豊田保健所との責任の擦り付け合いの 印象を強く受けた。 業者の分析結果は、いつも基準値以下二度目は、昨年11月に市が「安全宣言」を出した後、このまま一件落着でいいだろうか という思いで、少なくとも経過の記録は残しておきたいと、中核市に移行後の豊田市の(株) 枝下への行政指導文章の公開請求をし、本年2月に入手した。この膨大な文書と、先の県の行政指導に関する文書とを比較すると、豊田市環境部廃棄物 対策課の職員が大いに頑張ったことが、一目療然に理解できる。県職員が自らのアリバイ証 明程度にしか現地に足を運んでいないのに対し、市の指導ぶりには、地域住民の期待に応え て何とかしなければという思いが伝わってくる。中核市という制度には様々な評価があるが、 少なくともこの問題への対応については、地方分権論は見事に成功したと言える。 この膨大な文書について小笠原副代表が整理してくれたメモを見ると、この間(株)枝下 は2回分析業者に委託してダイオキシンの測定をしているが、いずれも基準値以下であった と市に報告している。ところが、市が平成12年3月31日に立ち入りし、検体を採取した 結果、大騒ぎになったような数値が出たのである。このことから二つのことが言える。 その1は、法律では産廃業者が自ら測定分析して結果を報告することを義務付けているが、 その報告がいかに当てにならないか、である。法律の不備が改善されねばならない。 その2は、民間の分析業者の分析技術をどう評価するか、という問題である。私たちが講 師に招いた大久保さんによれば、「分析業者といえども商売ですから、依頼者の意図に応じ て、いかようにも数字を出しますよ」ということだ。彼が、「市の安全宣言をそのまま信じ ることはできない」と言い、「検体の採取には、必ず被害者の立会いが必要」と主張する一 因も、この点にある。 自治区役員と地主の責任は重大産廃処分場問題は、ほとんどのばあい、地主が安易に売却や借地の契約をしてしまい、地 元住民を代表していると目される自治区長が承諾印を押してしまったことに、端を発してい る。過去には、区長に印鑑代が渡ったと噂される事例すらある。地元が目先の利益で同意し ておいて、「こんなはずではなかった、行政の監督が悪い」というのも身勝手な話だ。市は6月議会に、「豊田市廃棄物処理施設の設置に係る紛争の予防及び調整に関する条 例」を提出したが、これが現行に比べて改正か、改悪かは、微妙なところだ。特に、これに よって、いまの指導要綱の、焼却施設と最終処分場に関する事前協議制度と最終処分場立地 基準の地域住民等の承諾規定が廃止され、意見書の内容においても、「反対のための反対と いった反対意見や、関係住民の地域環境に関わりのない意見は採用されない」としているの は、大きな改悪と感じられてならない。 私見を言えば、こうした問題に住民が対処する最良の方策は、「自治区の民主化」の一語 に尽きると思う。つまり、住民の住環境に関する問題は、区長や役員だけで判断せずに、臨 時総会や総寄り合いで決定するという原則を確立することだ。そして、市政で情報開示が求 められるように、自治区の運営においても、執行部は、入手した情報をより早く、より多く、 住民に提供することが肝要である。 強制代執行をどう考えるか市の「安全宣言」においても、(株)枝下の事業場内の土壌や焼却灰からは、環境基準を 大きく超える濃度のダイオキシン類が存在していると指摘されている。災害などでこれらの 有害物質が流出する危険性を思えば、地元住民の不安は解消されていない。市は、今年度中での代執行を念頭に、そのための調査委員会を発足させた。税金を使って の代執行も解決策の一つではあると思うが、その際、二つの条件を付けたい。 その1は、費用の多寡にとらわれず、科学的な観点から万全な除去策を講じること。目の 前から有害物質がなくなってしまえば良い、という対策では困る。 その2は、代執行後直ちに、(株)枝下およびその役員に対して、求償権による損害賠償 訴訟を提起すること。これは、どれだけの税金が回収できるかという金銭の問題ではなく、 ケジメの問題である。第二の「(株)枝下」問題を起さないためにも。 |