体験型交通安全教育施設整備構想について考える
豊田市には平芝町に昭和45年開園した、主に幼児・小学生を対象とした交通公園がある。ここでは学校教育の一環として交通安全の指導、教育を実施しているが、事の発端は、この施設が完成後30年を経過し、実情とかけ離れている等の問題があると、市当局が言い出したことにある。
交通公園へは幼稚園、保育園から4歳児、5歳児が、それぞれ年1回、小学生は、1年生、4年生がそれぞれ年1回、訪れている。それとは別に資機材を各学校に持ち込んで学習する移動教室もあり、平成12年度の実績は次のとおりである。
小学校、幼稚園、保育園からの交通公園来場者数 |
14,361名 (例年ほぼ横ばい) |
一般の交通公園来場者数 |
32,540名 (13年度は約3,000増加) |
小学校、幼稚園、保育園への移動教室の対象者数 |
19,301名 (例年ほぼ横ばい) |
ちなみに平成13年1月1日から14年4月2日までの園児、児童の交遠死亡事故は、1件もなく、現在の交通公園は、結果からみれば一定の役割を果たしていると言える。
ところが、現状の豊田市の死亡事故発生状況を見ると事故率が高い年代層は、全国的な傾向と同じく、16〜24歳と65歳以上となっており、特にこの年代への交通安全教育を誰が、どうすべきかが、社会的課題になろうとしていることは否定できない。
そして、12年3月議会において全世代を対象にした総合交通公園構想の質問がされ、鈴木市長は十分検討する必要がある。2005年までの建設も一つのチャンスとして十分検討に値する」と答弁され、(財)豊田市都市交通研究所に体験型交通安全教育施設整備構想策定の調査委託がされた。
平成13年3月に策定された第6次総合計画(2001年〜2010年までの計画)では、体験型交通安全教育施設を整備することが明記され、12年度末に基本構想策定、15年度末の目標として用地の造成とされた。
(財)豊田市都市交通研究所に調査委託をしていた整備構想策定調査報告書の内容は、次のとおりである。
交通安全の課題
- 若者が車両の運転(危険性)を実体験できる教育(施設)が必要
- 高齢者に対して運動能力・反射神経等の低下が自分で体験して自覚できる教育(施設)が必要
- 車両の限界性能を理解していない無謀運転に起因するものもあり、体験的教育が必要
交通安全教育に必要な機能
- 車両特性を実体験できる教育
- 自分の運転能力を自覚できる教育
- 類似交通事故体験できる教育
- 交通事故の社会的責任を認知させる教育
体験型交通安全教育施設概要
施設規模 |
5〜10ha |
施設運営 |
公設・第3セクター |
事業費 |
約50億円〜100億円 |
事業スケジュール |
13年、基本計画策定、侯補地選定と市民公表
16年、造成工事、運営主体設立
17年、建設工事
18年、オープン |
そして、14年3月議会では、「利用対象は豊田市民及び豊田加茂広域圏の幼児から高齢者までに限り、全国のドライバーに向けての施設利用は考えていない」との答弁があった
全国の主な体験型交通安全教育施設 |
施設名 |
所在地 |
設立母体 |
開設年次 |
規模 |
学習館 |
交通公園 |
模擬路 |
高速路 |
低μ路 |
交通安全中央研究所 |
ひたちなか市 |
国 |
H3 |
100ha |
|
○ |
○ |
○ |
○ |
栃木県交通安全教育センター |
鹿沼市 |
県、警察 |
H7 |
4ha |
|
|
○ |
|
○ |
三重県交通安全教育センター |
津市 |
県、警察 |
H7 |
10ha |
○ |
○ |
|
|
|
広島県運転免許センター |
広島市 |
県、警察 |
H10 |
15.4ha |
○ |
|
|
○ |
○ |
山口県総合交通センター |
小郡町 |
県、警察 |
H5 |
8.4ha |
○ |
○ |
|
|
○ |
キョウセイ交通大学 |
岡崎市 |
民間 |
S39 |
21ha |
|
|
|
○ |
○ |
鈴鹿サーキット交通教育センター |
鈴鹿市 |
民間 |
S62 |
7.5ha |
|
|
|
○ |
○ |
アクティブセーフティー
トレーニングパークもてぎ |
茂木町 |
民間 |
H9 |
3ha |
○ |
|
|
○ |
○ |
交通教育センターレインボー埼玉 |
川島町 |
民間 |
S55 |
4.8ha |
|
|
|
|
○ |
※政令指定市も含め、市のレベルで施設の整備、運営を行っているところはありません
ここでまず考えなければならないこと
- 交通事故防止に一定の役割を果たしている現状の交通公園に問題はあるのか
- 体験型交通安全教育施設ができれば本当に事故が減るのか
- 交通事故防止に行政はどこまで責任があるのか
- 全世代に対して受講させる強制力のない市が、体験型交通安全教育施設の主体となる必要があるのか
- クルマのまちの責任とは何だろうか。本当に責任があるのか
私の主張は次の通りである
- 体験型交通安全教育施設整備構想は、交通事故防止が主目的であり建設ありきではないはず。構想は白紙から論議すべきである。
- 現状の交通公園でも交通事故防止に役立っている。わざわざ移転新設する必要はない交通公園は、最低限のリニューアルにとどめるべきである。
- ドライバー個人の責任と行政の責任、自動車メーカー、自動車教習所の責任を明確にする。
- 交通事故防止の行政責任は、生活道路への車両の進入禁止や歩道、自転車道整備やガードレール、信号機の設置等にとどめ、これらを早急に整備することに最善を尽くす
- ドライバーに対する交通安全教育は、本来、道路交通法に基づいて県警や自動車メーカー、自動車教習所などの責任において実施されるべきであり、市は、ドライバーに対する交通安全教育の主体となるべきではない。
市当局は、施設の必要性、体駿型交通安全教育の効果、市が取り組むことの意義、施設概略、施設運営収支等で、市民の皆さんからいただく意見はできる限り反映させたいと言っていますが、体験型交通安全教育施設を建設するという方針そのものは、今のところ変更する気はないようです。問題は、市民のために本当に必要な施設か否かにあります。
どうか、市民の会の皆さん、公表内容をよく吟味いただき、市で実施すべき事業かどうか考えていただいて、当局へご意見いただけたら幸いです。
1ページ/2ページ/3ページ/4ページ
|