会報 第7号  平成14年7月3日発行


老親制作:企画制作パオ
とき 7月13日(土) 午前9時30分 開場
  第1回 午前10時より
  第2回 午後1時30分より
   (いずれも槙坪夛鶴子監督の公演あり)
ところ 豊田市民文化会館小ホール
参加費 大人1000円  高校生以下500円
連絡先 映画「老親」を観る会
 岡田耕一  0565-88-9194
 小林おさむ 0565-80-5323
 高齢化社会到来の中で、2000年から介護保険が実施され、「介護の社会化」が強く叫ばれてきました。しかし、現場においては、介護の担い手は身内の、しかも一部の人に委ねられる傾向がいまだに強く、社会全体で支えるという構造にはまだまだ至っていません。そして「介護地獄」という言葉に象徴されるように、介護に関わることで身も心も疲れ果ててしまうというケースも少なくありません。「老親」の原作者は、誰もが年老いていき、介護が日常の光景となっていく中で、それでもなお前向きに人生を歩いていきたい、という願いを実体験に基づき、描きました。他人のために自己を犠牲にするのではなく、自分の人生は自分が主人公でありたい。これが現実される社会こそが、男女間わず一人一人が輝いて生きられるのではないか・・・「老親」を観ながら、自分のこと、自分の住んでいる地域社会におきかえて考えてみてはいかかでしょうか。(上映会のお同い合わせは事務局まで)

新清掃工場設置に係る環境影響評価に関する公聴会で意見陳述をしました。

 6月12日午後1時30分から豊田産業文化センターで、「豊田市新清掃工場設置に係る環境影響評価準備書についての環境影響評価に関する公聴会」が開催されました。
 これは、豊田市が現在の渡刈清掃工場の地点で建替えを計画している新清掃工場について、昨年12月に豊田市が作成した環境影響評価準備書に対する知事意見をまとめるための手続きとして、公募に応じた県民の意見を聞くもので、愛知県環境評価条例に基づいており、主催は県環境部です。
 今回の公募に応じた公述人は4名で、うち1人は、市内今町存住の、清掃工場の地元の市民で、あとの3人は私たち「市民の会」のメンバーでした。
 市が進めようとしている渡刈清掃工場の建替え計画の一番の問題点は、ダイオキシン対策という理由で、次世代型といわれる熱分解ガス化溶融炉が採用されようとしていることです。ガス化溶融炉は、すでにこの「会報」でも指摘してきたように、いまだ開発途中の技術であり、国内外で大小のトラブルが続いています。しかも、そのトラブルは、溶融炉の性格上、爆発を伴う危険性があります。にもかかわらず、国が、開発メーカー側のデータを鵜呑みにして、全国の自治体に対して、補助金制度などでこの方式へ誘導していることに対して、廃棄物問題に取り組んできた市民運動団体は、警告を発し、各地で異議申し立てをしています。
 「(株)枝下」のダイオキシン問題を契機に、こうした学習をしてきた私たちは、市民的な議論もないまま、ガス化溶融炉の採用を許すわけにはいかないという思いで発言をしました。
 以下に、発言の順に、どのような意見陳述があったのか、要約して報告します。

私たちは、十数年ダイオキシンを被ってきた

 今町在住の市民の発言は、大きくは2点に要約できます。
 その1は、これまで重金属やダイオキシンに汚染され続けてきた住民に、なぜ同じ状態の維続を強いるのか、ということです。市は、新しい炉を設置すれば、これまでより環境はよくなると言うが、それではこれまでの被害はどうしてくれるのか。新炉がダイオキシン対策になると言われても、ダイオキシンが問題にされるようになったのは、つい最近のことだ。これまでダイオキシンが発生していなかったのではなくて、「問題」にならなかっただけだ。市が発表している数値で過去に遡って素人計算をしてみても、おそろしくなるような絶対量のダイオキシンを周辺住民が被ってきたことは明らかだ。こうした状態が継続することに我慢できない。
 その2は、したがって、まず周辺住民に対する科学的医学的な健康調査を徹底的にやるべきで、そのデータがない環境影響評価は信用できない、という主張でした。
 清掃上場の煙を毎日見ながら生活している地元の人だからこそ、怒りを込めて言える発言で、説得力がありました。

ガス化溶融炉の安全性を思う

 「市民の会」のトップバッターは、小笠原輝美さんでした。論点は、ガス化溶融炉の安全性、溶融スラグの安全性、さらには、そもそもごみを溶融処理することの問題点などと、多岐にわたりました。
 第1に、1999年にドイツで起こったガス化溶融炉の事故を紹介しつつ、市は説明会で、「事故は起きるものとして対応をとりたい」と表明しているにもかかわらず、事故を想定した環境影響評価がされていないので、安全性についての不信感は払拭できないと指摘しました。特に、炉内の耐火レンガの、超高温状態での損傷の程度・進み具合の予測が困難であること、さらに、耐火レンガそのものの汚染の問題、その交換や処理方法にかかる経費について情報提供がないことなどについて言及しました。
 第2に、溶融炉で生成される溶融スラグを道路用材・土木資材として有効利用するとの計画に対して、現状ではそうした資材はコンクリート破砕物などで十分足りていることを指摘した上で、スラグは廃棄物の一種に違いないのだから、再利用の是非よりも、スラグの有害性・危険性の方が問題であると述べました。
 第3に、溶融炉の導入は、硬質プラスチックや粗大ごみを焼却して、ごみの容量を減らすことを目的としているが、ごみが減量されることの利点よりも、焼却によってどんな有害物質が生成されるのかわからない危険性の方が問題であり、ごみ処理は焼却ではなく、絶対的減量を目指すべきであると主張しました。

環境影響評価制度は、環境アワセメントにすぎない

 3番目は、小林収事務局長で、新清掃工場の計画内容よりも、環境影響評価制度の仕組みや、政策決定のあり方について発言しました。
 まず、県の環境影響条例に対する批判として、豊田市が事業主体の事業を豊田市が評価すること自体がおかしいと指摘した上で、a)ストーカー炉+灰溶融炉、b)直接溶融炉、C)熱分解ガス化溶融炉の3つから、C)を選択したとされているが、本来は、その選択にあたって、環境影響評価による比較がされるべきであったと思うが、準備書は、はじめからガス化溶融炉の採用を前提として、その安全性の理屈づけに終始している。これで、本来の環境影響評価と言えるのか、と疑問を呈しました。
 つぎに、なぜ豊田市は、十数年にわたって運転の経験をもっているストーカー炉を顧ないのかと、政策決定のあり方を問題にしました。補助金制度をちらつかせた国の誘導策にしたがっているだけで、自治体の主体的な判断を放棄していると言わざるを得ない。地方分権を推進するためにも、現業部門の職員の経験と知恵を大切にしつつ、ストーカー炉の運転方法の工夫の中から対策を講じるべきであると、主張しました。

ダイオキシンより未知なる物質の方が怖い。何よりも、ごみの減量を目指せ

 最後は、小坂井利生さんが登壇しました。
 第1点として、ガス化溶融炉の採用はダイオキシン対策とされているが、いま国が対策の対象としているのは、急性毒性を有するダイオキシンに偏っており、人類の将来にとって、より深刻な、慢性毒性をもつ多様なダイオキシン類に対して、溶融炉が有効かどうかは明らかになっていないと述べ、ガス化溶融炉の導入が新たな問題を引き起こす危険性を指摘しました。
 そして、第2に、ごみ問題が社会的問題になって以降、容器包装リサイクル法など、ごみの発生量そのものを抑制しようとする試みがされているが、豊田市がごみ減量化対策に真剣に取り組んできたとは言えない。まず、徹底したごみ減量化に取り組み、その上で清掃工場の規模や内容が論じられるべきである、主張しました。

 いまの制度では、以上の意見がどの程度まで知事意見に反映されるか、あまり期待はもてませんが、4者4様の意見陳述ができたと、自画自賛しています。

(市民の会事務局長 小林おさむ)

「豊田市におけるPCB廃棄物広域処理施設建設について」

サッカー場問題を忘れない!とよた市民の会 代表 岡田耕一

 最近の豊田市では、(株)技下のダイオキシン問題に始まり、大企業の工湯敷地内の地下水汚染問題、ガス化溶融炉を前提とする新清掃工場建設問題、産廃中間処理施設建設問題等、ごみ問題、環境問題に事欠きませんが、また、新たな問題が急浮上してまいりました。
 新聞報道等でご存知かもしれませんが、有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物広域処理施設建設問題です。これは、平成13年7月15日に「ポリ塩化ビフェニール廃棄物の適正な処理に関する特別措置法」が施行され、15年以内の処理が義務付けられるとともに「環境事業団法の一部を改正する法律」施行により環境事業団によるPCB廃棄物の処理が新たに位置付けられました。そして、全割こ7、8カ所の拠点施設にて広域処理させたいというもので、この地区では、愛知、岐阜、三重、静岡の4県で1カ所の処理が計画されております。
 そして、6月14日に国及び東海3県の意向を受けた愛知県の副知事が豊田市長に対して正式に東海4県を対象とした環境事業団こよるPCB廃棄物の広域処理施設の豊田市内への立地の協力要請がありました
 豊田市としても平成12年9月に平岡正勝京都大学名誉教授を委員長とする豊田市PCB廃棄物適正処理検討委員会を設置し、市域におけるPCB廃棄物の適正処理のあり方について審義を重ね、環境安全対策等の答申も出されております。
 では、豊田市におけるPCB廃棄物の保管状況を見てみましょう。平成10年度時点では、PCBの含まれた高圧トランス・コンデンサの保管・使用量は、6300台強で県内の約26%を占めます。この多くは、自動車産業で使用されたものであり、これらのこともあり最大の保管、使用者であったトヨタ自動車の工場内に施設建設というシナリオができたものと思われます。
 しかし、昨年来、この問題については、我々議会に対しても事前に相当の説明があったものの一向に進展しませんでした。これは、地元選出の保守系県会議員が、強力に反対されていたという情報もあり、今回の急展開は、別の角度からも注意深く見守らなければならないと思います。
 先日の我々議員に対する市長ならびに環境部からの説明では、建設予定地に隣接する7自治区(約9500世帯)及び予定地に隣接して流れる逢妻男川近傍10自治区(約12500世帯)に対して重点的に説明をし、7月上旬を目途に受け入れに向けた意見調整を行うとしています。また、受け入れの前提条件として、国及び東海4県の全面支援はもちろん、市民理解を受け入れ条件にもしております。
 しかし、この短い期限を区切った理解活動で本当に市民に対して情報提供、理解活動ができるとは思えません。そして、何より理解が得られなかった場合に「受け入れられません」という選択肢があるのかどうか、疑問です。PCB廃棄物の処理の必要性は、誰もが認めるところです。しかし、こうした迷惑施設が、なぜ、豊田市なのか、なぜ、自分の家の近くなのか、という率直な疑問にはなかなか回答できません。今までの説明等でも素人の私たちには、これでいいのかなと思わせる説明があり、我々市民の会でも今後どういうスタンスを取っていったら良いのか迷うところです。
 少なくとも今の段階では、早急にことを進めるのではなく、市民への理解活動、地元への理解活動をしっかり行い、将来、遺恨を残さないよう要望するともに経過についてしっかり監視しなければならないと思っています。

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