2025/01/07(火)
読書感想
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『台湾と沖縄―帝国の狭間からの問い』(みすず書房 2024.10刊)を読了した。豊田市中央図書館がリクエストに応えて購入してくれた本で、返却してしまうと忘れそうなので、簡単な感想を記しておきたい。 本書の帝国とは、アメリカ・中国・日本である。そして、本書で台湾を代弁するのは、台湾を国家にすることを願い中国の威圧と恐怖と感じる知識人であり、沖縄を代弁するのは、沖縄から基地撤去を目指しながら住民投票によって基地のあり方や独立の問題を決定すべきである考える住民運動家である。ところで、台湾と沖縄を念頭にした日本のリベラル左翼の一般的感覚では、アメリカの沖縄の基地からの撤退を求め、香港に対する中国の圧政を非難し、アメリカに追従する日本の体たらくを批判することになろう。 ここで問題は、一見まともに感じられる日本のリベラル左翼の主張が、先述の台湾と沖縄の主張を包摂しうる内容を有しているかどうかである。リベラル左翼と沖縄が「反米」で一致できることは容易に推測できる。しかし、中国に恐怖を感じる台湾に「反米」の共有を求めることは無理であろう。では、香港の民主主義に共感した我々は、中国に恐怖を感じる台湾に何の共感も持てないのか。香港の民主化運動はアメリカCIAの手先になったものだとする単純・軽薄な左翼とは無縁の我々は、台湾と沖縄の架け橋になるためにどんな論理を構築できるのかを本書は問うている。 と同時に本書は解答を示している。日本本土の民が、「日本を帝国主義ではない民主国家にすることだ」と。
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