「矢作川を子供たちが泳げる川にしたい」… これが、地方議員を志すにあたっての私の原 点でした。その思いから、巴川ダムや矢作川 河口堰への反対論を唱え、流域下水道ではな く単独公共下水道にせよ、と主張し、流域の 各種開発に反対する運動に関わってきました。 矢作川は、関係者の熱意と努力とによって、 1970年ごろに較べれば、見た目には見違え るほどの清流を取り戻したと言えるでしょう。 しかし、残念ながら、水質や川相において、 子供たちが泳げる状態にははど遠い感があり ます。 川は、川だけのことを考えていたのでは、 |
ドンドン借金をして公共事業をやるという 従来の政策がまかり通ってきたのは、公共事 業が景気浮揚に効果があると信じられてきた からです。ところが、1990年代以降の景気 の状況は、それが間違いであったことを事実 をもって証明してしまったと言えるのではな いでしょうか。 数年前に、ある財政の研究者が、同じ金額 の投資を、従来のように土木・建築部門にし たばあいと、福祉・医療部門にしたばあいと で、その経済波及効果がどのように違うかを 試算しました。それによると、全体の波及効 果の数値はほぼ同じでしたが、雇用効果では、 |
蘇らせることはできません。何よりも山を蘇 生させ、流域に住む私たちと川との関わりを 変えていかなければ、本当の清流を取り戻す ことはできないでしょう。 そこで、私はまず、県の公共投資を県土の 保全事業に優先的に振り向けることを訴えま す。一つの具体例を言えば、山林の間伐、枝 打ち、下刈りなどの作業を公共事業と位置づ けて、計画的に実施し、山を荒廃から守るこ とです。これは、三重県、和歌山県などで事 業化されようとしています。一口に、「脱ダ ム宣言」と言っても、ダムに頼らない治山や 治水をするためには、ただダム建設を止めさ えすればいいのではなく「緑のダム」といわ れる山の治水力を回復・維持するたゆみない 努力が、流域の私たちに求められていること を忘れてはならないと思います。 |
福祉・医療部門への投資方が、効果がはるか に大きくなるという結論になりました。 高齢化社会への対応も、21世紀のわが国 の重要な課題です。「終わり良ければ、すべ て良し」という諺があるように、福祉・医療・ 衛生の分野の充実は、人間の一生の価値を大 きく左右する課題です。この分野を、「金食 い虫」と否定的にとらえるのではなく、景気 対策・雇用対策として、積極的に評価する政 策転換が必要です。 この分野は、つまるところ、「人が人の世 話をする」仕事ですから、リストラによる合 理化とは本質的に相容れない分野です。公共 投資をするにあたっては、収容型の福祉施設 の充実もさることながら、「人の世話をする」 人の充実、つまり、人的資源の育成、確保、 増強に惜しみない支援をすることが必要です。 (次ページヘ) |