会報第16号 17年6月1日 発行
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 これまでの診療報酬は、出来高払いが原則でした。つまり、治療に要しただけの費用を健康保険に請求するものでしたが、そのシステムですと、医者が過剰検査、過剰治療、薬づけ医療をして、報酬点数を増やしているのではないかという、批判が高まりました。
 そこで、包括払いというシステムが導入されました。これは、1日1人いくらという単位を、報酬点数の基にしようというものですが、このシステムですと、患者に対して、何もせず放って置くのが一番儲かるわけですから、粗診・粗療になるという、逆の弊害が指摘されています。
 また、医療機関の連携について言えば、大学の医局制度の弊害がまだ残っていて、比較的近いところにある同規模・同水準の病院が、大学の系列が違うという意地だけで競い合っているのは、どうかと思います。医療分野を特定して連携し合って、臨床例を増やした方が、お互いの医療技術も向上すると思うのですが。

「生寿会かわなブロック」がめざすもの
 私が勤務しているかわな病院の近くには、日赤病院や大学病院などの高水準の急性期医療ができる大病院が多くあります。その中で、一般病床53床の民間の小病院が、地域医療においてどんな役割を果たすべきかを模索しています。現在53床のうち10床を、急性期と慢性期をつなぐ亜急性期病床にあて、透析センター、ディケアセンター、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、居宅介護支援事業所などとともに、老人保健施設を併設しています。
 名古屋へ来て驚いたのですが、高い地価の関係で、名古屋には老保施設や特養施設が、人口の割合に極端に少ないです。私たちも最近の事業展開は、日進や東郷の方面に求めざるを得ないのが実情です。
 都市型の地域医療のあり方を考えると、認知(痴呆)症への対応に加えて、独居老人、特に男性の独り暮らし老人の増加を念頭に置いて、在宅ケア総合支援システムをどう構築できるかが、私たちの課題だと思っています。

医療・介護の「サービスモデル」の転換
 介護保険制度の発足で、医療と福祉・介護との連携がし易くなり、今後もっともっと連携を深めていかねばならないと思いますが、地域医療・地域介護という観点で考えるとき、住民(患者)に求められる「サービスモデル」が、大きな転換点を迎えていると思っています。
 その第1は、「介護」のあり方です。これまでは、単に困っている人のお世話をするのが介護を考えられてきましたが、それだけでは、介護度が増していくばかりで、介護保険制度の存立が危うくなります。それで、厚労省も言い出しましたが、これからは、予防的介護、つまり、介護度を進行させない介護が求められることになります。
 第2は、「身体ケア」のあり方です。これまでは、寝たきり老人をつくらないことが一義的な目標でしたが、それに加えて、身体は丈夫でも、痴呆を抱えている人にどんなケアができるのかが、大きな課題になってきます。
 第3は、「家族同居」モデルの崩壊です。これまでの在宅ケア・在宅医療は、基本的には同居の家族が担うことが前提とされてきましたが、独居老人世帯の増加は、そのことが不可能になりつつある実態を示しています。この問題を克服することが、まさに地域医療・地域介護の課題だと思います。
 医療機関の役割としては、急性期医療での技術の向上もさることながら、これからは障害をもちながら生きていく人が当たり前になるという認識で、リハビリ期などの医療の充実にもっと力を入れていくことが必要だと思います。
(文責:小林 収)

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