会報第17号 17年9月14日 発行
1ページ2ページ3ページ
豊田市におけるフェロシルト問題を考える
市政改革とよた市民の会 代表 岡田 耕一
 埋め戻し材「フェロシルト」のメーカーである石原産業鰍ヘ去る7月25日より本市深見町下田に放置しているフェロシルトの自主回収を開始いたしました。深見町岩花のフェロシルトについても7月29日にボーリング調査を実施し、今後、自主回収を開始する予定です。

回収前のフェロシルトの山 (下田地区)

 そして、石原産業鰍ヘ、7月29日に「愛知県、三重県においても可能な限り自主回収する」との方針を明らかにしました。この間、とよた市民の会は、「ダイオキシン・処分場問題愛知ネットワーク」の一員として各地域での説明会に参加したり、各県、市の行政担当者から説明を受けてきましたが、豊田市においてもいくつかの点が明確になっていませんでした。
 そこで、8月17日に鈴木公平豊田市長に対して9点の質問及び6点の要望を記した公開質問書を提出しました。そして、その回答が、9月1日にありましたのでご報告いたします。また、8月28日には、市民の会の有志にて、下田地区のフェロシルトの回収状況および、岩花地区の現状確認を行っています。

(参考)フェロシルトとは
フェロシルトとは、酸化チタンを製造する際に発生する汚泥を消石灰などにより中和処理した粘土質の物質で、三重県四日市市の石原産業鰍ェ四日市工場にて製造しているものです。
 フェロシルトは平成15年9月に三重県から認定リサイクル製品(認定番号建一33)として認定され、主に「土地造成時の埋戻し材」として利用されていましたが、平成17年4月29日に業者からの取下申請により認定を取り消されています。

深見町地内「フェロシルト」自主回収に関する公開質問書に対する回答

1)フェロシルトの回収先について
石原産業が本市に提出した自主回収計画によりますと、回収したフェロシルトを四日市工場に搬出することになっています。本市では、四日市工場への全量回収をどのように確認しますか。
(回答)
今回のフェロシルトは三重県が廃棄物のリサイクル製品として認定した埋め戻し材ですので、愛知県及び本市の見解としては、今回の搬出については、製品の回収であるとの認識に立っています。
したがって、フェロシルトを当該地域から運び出す場合、マニフェストの必要はありません。石原産業鰍ェ作成した回収計画によると、四日市工場に回収するとしていることから、本市としては、搬入以前の段階において、三重県及び四日市市に対して、回収したフェロシルトを同工場に搬入する旨連絡を入れていますし、当該地域からの搬出を定期的に確認しています。

2)フェロシルトの汚染の認識について
@各地で調査されたフェロシルトは各種測定値に大きなばらつきがあります。私たちは、フェロシルト自体の品質上、汚染度にばらつきがあるものと認識していますが、この点に関する本市の認識をお示しください。また、本市が実施したふっ素や六価クロムの溶出試験について、検体物の採取方法や、検査の方法について具体的に説明してください。
(回答)
本市のフェロシルトの測定結果によると、ふっ素が環境基準を超えていましたが、六価クロムは環境基準内であったというように、製品や測定値によってばらつきがあることは十分認識しています。
 したがって、今回の調査だけで判断するのではなく、周辺環境への影響がないかどうか今後とも環境モニタリング調査を実施していく予定です。
 調査については、埋め立てられているフェロシルトを採取し、専門の分析業者に依頼しました。採取については、フェロシルトの分析のため土壌汚染対策法にはよらず採取していますが、分析については土壌汚染対策法に基づき分析しています。

A本市では、通常値以上の放射線を含むフェロシルトを有害物と認識していますか。
(回答)
通常値については、大気汚染、水質汚濁、騒音などの環境基準とは異なるものと考えています。日本における通常値の平均は一般に1mSv(ミリシーベルト・パー)/年と言われ、日本国内でも場所によって異なっています。また、世界の平均は2.4mSv(ミリシーベルト・パー)/年とも言われています。
このように、放射線が通常値以上であるからというだけではフェロシルトが有害物であるとは一概には言えないと考えています。

B本市では、ふっ素や六価クロムが環境基準を超えるフェロシルトを有害物質と認識していますか。
(回答)
土壌汚染対策法における土壌溶出基準を超える特定有害物質(ふっ素・六価クロム)が検出された場合、フェロシルトは、直接摂取によるリスクや地下水等摂取によるリスクがあることから、埋め戻し材としての利用は不適当であると考えます。

C各種調査で汚染が確認されているフェロシルトでも、有価物として取り引きされれば、本市は産業廃棄物ではなく、製品として認めるのですか。
(回答)
「廃棄物」か否かについては、「規制改革・民間開放推進3か年計画」において平成16年度中に講ずることとされた措置についての通知に基づき、環境省及び愛知県と協議しながら判断しています。
この場合の廃棄物に該当するか否かの判断に当たっては、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意志等を総合的に勘案して判断する必要があります。
したがって、有価物として取り引きされたものが、「すべて製品であり、廃棄物ではない」と言えるものではありません。

3)本市の対応について
この事件で本市の対応を見ますと石原産業(株)がフェロシルトを自主回収されれば、すべて解決したと認識しているように感じてなりません。この問題は藤岡第2中学校建設問題にも大きな影響を与えましたが、情報の収集や初動体制を含め、本市の対応に問題はなかったと認識していますか。
(回答)
製造業者によるフェロシルトの回収作業が、同様の問題を抱えている他の自治体(地域)と比べていち早く実施されたことからしても、本市の対応について、特に問題はなかったものと認識しています。

4)本市は、深見町下田地区から採取したフェロシルトに含まれるふっ素と六価クロムの溶出試験を実施しました。また、ふっ素と六価クロムについて現場の湧水を調査しました。更にはフェロシルトが埋め戻されている場所より周辺500m以内に存在する井戸を対象に7月20日から22日にかけて地下水調査を実施しました。これらにかかった費用は市が負担していると思いますが、人件費を含めた経費はどのくらいになりますか。
(回答)
人件費等を含めた調査にかかった費用については、市民の健康や生活環境の保全のために行政として実施したものですので、正確な算定もできないうえ、その必要もないと考えます。

5)今後の展開について
@深見町以外にフェロシルトが埋められている可能性はありませんか。
(回答)
県及びフェロシルトを生産した石原産業鰍ゥらの情報からは、他の地域においてフェロシルトが埋められている可能性は伺えませんでした。
今回の事案による市民からの情報に基づき調査をした結果、他の地域におけるフェロシルトの埋め立てを示唆するものはありませんでした。このように今後も、市民等からの情報提供を始めとする情報収集の中で調査し対応していきます。

A同様の問題が存在する可能性を否定できない現在、他の地域でフェロシルトが埋められていないか調査する予定はありませんか。
(回答)
前問と同様、市民等からの情報提供を始めとする情報収集の中で調査し対応していきます。

回答に対して
今回の公開質問書の回答は、100%満足できる内容ではないものの、フェロシルトを有害物であり、産業廃棄物であるという認識を行政当局も持っているということで私たちと一致し、その点では評価できると考えます。
そして、中核市であるがゆえに迅速に対応できたともいえます。その点では、以前からフェロシルト問題を抱えている瀬戸市や岐阜県瑞浪市、土岐市より、結果的に早期に回収にこぎつけることができたのではないでしょうか。
今後、私たちの活動としては、自主回収終了時にすべてのフェロシルトがしっかり撤去がされたのか、撤去後の土壌、水質の汚染がないかなど、継続して監視していきたいと考えています。

1ページ2ページ3ページ

Copyright (C) Toyota Citizens Associations 2005. All Rights Reserved.