会報第27号 2011.11.2 発行
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Q:なんで「原発」国民投票をするのか?
A:今こそ、環境・エネルギーの問題について
国民自身が決める時期だと思うのです。
 「これだけ原子力発電の危険性が明らかになった以上、脱原発以外に選択肢はあり得ない」「そうはいっても、即時全ての原発の稼働を停止してしまったら、国民生活はどうなるのか」。連日、さまざまな所でこういった議論がなされています。今まで原子力発電には関心のなかった国民も、今回の福島での原発事故で「このままではいけない」と思い始めています。しかし、原子力発電推進はこれまで国の政策ですから、これを何らかの方向に変えさせるには手順が必要となります。
 では、原発を今後どうするか、国会で国会議員の議論に任せてしまえばよいのでしょうか。今回の大震災を受けてさまざまな状況が変わった今、国民の大半が原発の是非についてようやく考え始めたばかりです。大震災以前に国民の負託を受けた国会議員に判断を任せるよりも、主権者たる国民が直接意思を表明する機会が必要だと思います。
 名前はよく聞く「国民投票」ですが、実は憲法改正以外の案件を国民投票にかけることは、実施の可否を含め憲法には一切書かれていません。そうなると、「じゃあ国民投票はできないのか?」となってしまいますが、法的拘束力を持たない国民投票(諮問型国民投票)なら可能です。国民投票の結果を政府や議会が自らの判断の材料にするというものです。法的拘束力を持たないといっても、国民投票により表明された国民の意思は大変影響力があります。政府や議会がそれを無視することは非常に難しいでしょう。
 一方で、「脱原発」派の中には、「国民投票を行って仮に『原発推進』という結果が出てしまったらどうするのか」と、国民投票の実施そのものに慎重な姿勢を見せる人たちもいます。そのようになる可能性は否定できません。しかし、国民投票の結果以前に、「原発」について私たち国民がちゃんと情報を得て、決断を下すというその過程のほうこそ意義があると考えます。
 今回「原発」国民投票の講演をしていただく今井一さんの著書の中に、各方面の著名人の発言を集めた章があります。その中で、「原発推進派」である経済評論家の池田信夫氏のツイッター上の発言が掲載されていますので、一部引用します。『かつて電力会社が原発のリスクを隠してその経済性を宣伝したように、今は反原発派が再生可能エネルギーの不経済性を隠して安全性を宣伝する。バイアスに迎合するマーケティングは終わらない』。この言葉は真実をついているものと思います。単に脱原発を訴えることと、脱原発により抱えることになるであろう不便・不利益を承知の上で脱原発を受け入れることとは、大きな違いがあります。原発を維持するかやめるかは、主義主張ではなく生活そのものに関わってくるものであり、それゆえにいろんな立場からの情報を得て総合的に決められるべきです。その機会がまさに、国民投票であると考えます。原発推進派、脱原発派が持論を展開し、相手の主張のデメリットを明らかにする。国民はそれを見て判断する。「いまの政治は国民の意思を反映していない」「情報をちゃんと開示しようとしていない」とただ不満を述べるより、国民投票の実施に向けて行動するほうが、社会が大きく変わる可能性があるのではないでしょうか。
(とよた市民の会 小笠原輝美)

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