2000年4月から実施された公的介護保険 制度は、一部に反対論もありましたが、これ まで家庭の中に閉じ込められ、特に女性に押 し付けられてきた介護を社会化する一歩を踏 み出したことには、大きな意義があると思い ます。加えて、急激な少子化の中で、育児の 社会化も大きな課題になってきました。 しかし、私は、特養ホームの建設や延長保 育をするという、収容型施設の充実だけでは、 本質的な解決にはならないと思います。 これまでの社会を築いてきたお年寄りも、 これからを担う子どもたちも、共に「社会の 宝」だからこそ、社会全体でお世話をするの だ、という共通認識が必要です。世話をすべ き家族を収容施設に入れたから一安心、とい う風潮も一掃されなければなりません。 それには、収容型施設の拡充とともに、男 女が協力し合って介護や育児ができる社会シ ステムづくりが必要です。男性が育児休暇や 介護休暇をとることが新聞記事になるようで は、まだまだこれからだと思います。サービ ス残業をして、過労死に至るまで働くという 「会社人間」的男性が尊重されるようでは、 男女共同参画社会は夢物語です。 介護や育児の社会化とは、単に女性の負担 を軽くするという問題ではなく、労働のあり 方や、夫婦や家族の人間関係のあり方までを |
問う問題です。 さらに、一昔まであった「福祉のお世話に なる」という発想も一掃されねばなりません。 福祉は、お上(行政)が権限と責任を一手 にして措置する(面倒をみる)ものではなく、 「困ったときはお互い様」の精神で、お世話 をし合うことに本質があると思います。ただ、 そうした人間関係ができるシステムづくりに は、行政が責任をもたねばなりません。 その意味で、NPOやボランティア団体が、 単に行政の下請けになるのではなく、福祉活 動の主体となるようなシステムが必要です。 この分野での行政の役割は、住民と一番密 接な市町村の役割が最も大切ですが、県とし ては、単に国からの情報の市町村への伝達機 関に終わるのではなく、市町村の立場に立っ て、市町村が抱える課題の解決や提案の実現 を国に追っていく姿勢が求められます。 特に県は、雇用の確保を含む労働行政やN PO法人の認可については、市町村とは違う 権限をもっていますから、ただ国の政策を実 施するだけではなく、地域の実情にあったき め細かい施策の展開が必要です。 私は、そうした施策の発信源は県民の活動 の中にあるという確信をもって、政策提案を 重ねていきたいと思います。 |