会報第24号 20年7月2日 発行
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本 の 紹 介
小林 おさむ
青木秀和著 『「お金」崩壊』 集英社新書(756円)
 私は、中村敦夫参議院議員(当時)の呼びかけに応じて、「みどりの会議」という政治団体の推薦で2003年の統一地方選挙を戦った。2004年夏の参院選での中村議員の落選により「みどりの会議」は解散し、若者を中心に「みどりのテーブル」という「緑の党」を目指す組織が立ち上げられ、私も会員になった。と同時に、この地方で2004年の選挙を戦った仲間で、「みどり東海」というグループがつくられ、私はその共同代表になっている。
 その「みどり東海」の仲間である青木秀和さんが、積年の研究活動の集積としての本を出版した。それほど高価な本ではないので、ぜひ購読してほしいと思う。
 青木さんは大学に席をもつ学者ではない。本書の著者紹介から引用しよう。
1955年長野県生まれ。緑の共生社会研究所共同代表。常に平場(庶民の立場)に身を置きつつ、高い分析能力と政策立案能力を兼ね備えた知識人を目指す市民研究者。主著は、河宮信郎と共著の『公共政策の倫理学』(丸善)。エントロピー学会、ゲゼル研究会に参加。中村敦夫、川田龍平両参議院議員の政策ブレーンも務める。
 著者の主張を結論部分から紹介すると、「いま私たちに必要なのは、資金循環という金融システムと社会経済の間を取り持つお金の循環、資源循環という自然資本と社会経済を結びつかせるモノの循環、そしてこの二つの循環がお互いどのように関連づけられているかをトータルに把握しようとする俯瞰的な視点の獲得なの」だということになる。
 そして、本書の前半部分を構成する資金循環の分析においては、我々が老後への心配から貯め込んだ預貯金が国債や米連邦債の購入に使われ、国家財政や国際金融を支えていることを丁寧に説明し、一千兆円を超えるわが国の公的債務はいまや返済不可能な事態になっているが、我々はその巨額な債務についての債権者であると同時に債務者であることを自覚しなければならないと指摘する。

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 しかし、この10年程度の間の急速なグローバル化の中で1京3,800兆円にも達した国債金融資産の運用で儲けようとしている連中は、資源循環の視点には全く無自覚である。石油の全埋蔵量の半分が使われた時点を「ピークオイル」というが、我々はいま正にその時点に存在している。石油の代替エネルギーの確保は現実的には不可能であるから、「お金」の論理による資金循環を続けること、つまり、経済成長を求め続けることは、地球という自然資本の自己崩壊をもたらすことになる。
 だが、わが国で、例えば、2050年時点でエネルギー消費量を現状の25%にすることは、人口減による経済活動の縮小などを前向きに考えれば、それほど「悪くない」未来像になる。人類全体がいまの半分のエネルギー消費量で暮らしていたのは、1970年ごろであり、それほど昔のことではないのだから。
 
いまこそ「緑の党」が必要不可欠である!

 民主政治という枠組みの中で、経済成長至上主義に終止符を打ち、持続可能な社会経済を築くためには、こうした主張が、選挙における政策として掲げられ、ときの政権によって採用され、生産と消費の仕組みにメスが入れられねばならない。「地球環境を守りましょう」という人々の善意で実現できると思うのは、厄介な幻想である。資金循環による資源循環の破壊に歯止めをかけるために、わが国においても、何としても早期に「緑の党」が国政選挙に登場し、政策遂行可能な議席を確保しなければならない。これが、私の率直な第一の読書感想である。

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