会報第25号 2009.11.11 発行
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徳山ダム導水路への公金支出差止の
住民訴訟を起こしました

   さる5月15日に、河村たかし名古屋市長が撤退表明をしてから、木曽川導水路という公共事業が、マスコミを賑わすようになりました。

木曽川導水路とは何か?

 国交省は多くの反対運動を押し切って、揖斐川の上流に、総貯水量6億6千万m3という巨大ダムを建設し、昨年秋に貯水が満水になりました。ところが、利水の観点からは、ダムができただけではこの水は使いようがないのです。そこで、徳山ダムの水を、一部長良川を経由して木曽川まで、直径4mのトンネルを造って導水しようとするのが、木曽川導水路事業といわれるものです(別図参照)。

その目的は?

 国交省は事業目的として、2点挙げています。その1は、愛知県と名古屋市の水道用水を補うことであり、その2は、ヤマトシジミに代表される、木曽川河口部の生態系を守るために必要な水だ、ということです。そして、最近では、大渇水対策に必要だ、と言い出しました。これらの目的は、本当に当を得たものでしょうか。

徳山ダム導水路木曽川水系に水不足はない

 徳山ダムの本体着工に先立って、1995年に国交省(当時:建設省)は、これまた全国的な反対運動を押し切って、長良川河口堰を完成させました。ところが、計画で必要とされた22.5m3/秒の利水のうち、いま使われているのは2.7m3/秒に過ぎなく、それも、河口堰の必要性を示すアリバイづくりのために、従来保持してきた暫定水利権を放棄して転換したものなのです。つまり、木曽三川を総称して木曽川水系と言えば、矢作川水系のように流域住民が互いに水を分かち合うという意識と取り決めがあれば、木曽川水系には、利水としては、長良川河口堰も徳山ダムも必要なかったのです。河村名古屋市長が、「名古屋に水は余っている」と公言される所以です。

生態系は人為的操作では守れない

 また、徳山ダムの水で、木曽川のヤマトシジミを守ろうという発想も笑止千万です。国交省の資料によれば、あの平成6年の大渇水でも、木曽川のヤマトシジミは健在だったのです。つまり、生態系を構成する生物は、上流から一定量の水を流してやれば守れるという単純なものではないのです。むしろ、河口堰の建設で長良川のヤマトシジミを全滅させてしまった国交省が、使い途がない徳山ダムの水を引っ張ってきて、木曽川のヤマトシジミを救ってやろうとする傲慢さが糾弾されるべきだと思います。

890億円のムダ使い

 この事業の総費用は890億円とされ、愛知県が318億円と、国についで多額の負担をすることになっています。徳山ダム反対運動は岐阜県民が担ってきましたが、木曽川導水路については、愛知県民としての責任があるという思いから、さる5月19日、愛知県知事と企業庁長を被告として、事業への公金支出の差止を求める住民訴訟を名古屋地裁に提起しました。
(小林 收)

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